久々に田園風景の広がる小さな町を訪れました
今から10年ほど前、
友人がこの町のペットフード工場に勤めていて、
その縁で春夏秋冬、何度も訪れていたものです
基幹産業となっていた大手ハウスメーカーが先年に倒産してしまい、
行く末の案じられていたのですが、
予想していたほどうらぶれた感じはなく、ほどよい賑わいを見せていました
町の入口の、線路を潜るトンネルを抜けると無性に懐かしくなってしまって、
仕事の始まるまでの待ち時間、
駅前の大通りをクルマでゆっくり流し風景を愉しみました
以前、何度も通った古本屋さんは今は跡形もなく、
並びの金物屋さんだけが古びた佇まいを残していました
仕事が終わって帰り際、来たトンネルを再び潜って町を抜けると、
すっかり地表に姿を現した白い牧草が、
殻つきの産まれたての雛のような弱々しい湿り気を宿し、
夕方の陽光を浴びています
半ば無意識にサイドガラスを少し下げてみると、
鼻腔をするどく突くような、草むらの匂いが車内に立ちこめました
瞬時に春が満ちたような、不思議な体験でした