今、水曜日の午後10時、シリアスなテーマという点で共通ながら、
内容はまったく対照的なふたつのドラマが放映されています
ひとつは、難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に冒された、
若者の日常と気持ちの変遷、そして覚悟を丹念に描いた骨太な作品
若くしてこの病気を発症した主人公の戸惑いや絶望がリアルに表現されており、
スタッフがこの病気に向き合い、事前にしっかり取材した形跡が伺えます
もうひとつは、エピソードとして実在する「赤ちゃんポスト」が登場し、
主人公の名前もそのまま「ポスト」
児童養護施設を舞台にした作品で『21世紀で一番泣けるドラマ』を標榜しています
しかしこちらは、涙腺を弛ませる為に舞台装置だけを拝借したような印象で、
「ポスト」にまつわる実情や施設の現実には関心が無いようです
最初は前者のドラマだけを観ていましたが、
話題になったこともあり後者のドラマも見始めています
共通しているのは、どちらのドラマもエンターテイメントとしては優秀だということ
そして両者とも主演俳優が素晴らしいこと
後者の子役の女の子は元々芸達者ということで知られていましたが、
前者の三浦春馬の好演は想像以上でした
チャラい一般的な若者が病気と向き合わなければならなくなった時の表情も良いし、
感情を発露させた直後に良く見せる、空しさと哀しさの入り混じった笑顔を見ると、
彼以外でこの役を演じるのを想像するのが難しいほどです
役柄に真摯に向き合っているのが画面越しに伝わってきます
後者のドラマは確かに面白いけれど、
一体何に感動して、どうして泣くことなるのか、
今のところわたしには判りません
不遇な境遇でも強かに生きる子どもの健気さを訴えたいのか、
偽悪的な施設長や施設スタッフたちの人間ドラマで感動を与えたいのか
でも、その感動の賞味期限はどれくらいでしょう
ドラマの後の天気予報が終わるまでの長さしかないのでは
まあ、それでもいい
しかし、一般視聴者を涙させるというその行為が、
どれほど崇高で高利益なものであるにせよ、
実際にこの境遇で、今生きている子どもたちを傷つける理由にはなりません
報道では自殺者が出たら、とかリストカットする子どもが、など、
センセーショナルな取り上げられ方をされていますが、
そんなことではありません
人の心に寄り添う想像力が少しでもあれば、容易に理解できるはず
とても深刻な問題である保護児童と、彼らを支える関係者の心に、
少しでも痛みを感じさせてしまうようなドラマを、
「面白いから」「感動するから」という理由で擁護する人の気持ちが、
わたしにはまったく理解できません
ただ今後、ドラマの展開で大きな変化が見られる可能性はあります
テレビ局は「黙って最後まで観ていろ」という態度を崩していませんから、
もしかすると、お涙頂戴の陳腐な物語を大きく凌駕する、
深淵な結末が待っているのかもしれません