講演会(公演会)の調子でリズムよく進みます
文中で作者が「わかりにくさは罪」と言い切るように、
分かり易くて面白い、そしてためになる話が次々と語られます
賢くなると同時にお笑いも一席ぶってくれる、とてもお得な本です
パオロ氏の正体はよくわかりませんが、
おそらくは学者さんでしょうか、彼らを糾弾する舌鋒の鋭さは、
同業者に向けられた近親憎悪のようなものを感じさせます
それはさておきパオロ氏は、
批判や論理のような「正しさ」一辺倒の「つまらない」ものに代わり、
「ボケ」のように天才しか操れないものではなく、努力次第では凡才まで使いこなせ、
なにより「おもしろ」く、それゆえ民主主義国家的な「つっこみ力」が必要だと説きます
かといって力瘤つくって唾撒き散らし自説を主張したり、
眉間にしわ寄せてご高説を賜るような方法ではなく、
ギャグを織り交ぜた、誰でも理解できる平易な文章を駆使して、
とても大事で本質的な内容を語っています
恐るべき文章構成力、一遍に虜になってしまいました
第2章は「データも方便」という言葉に集約される統計の危うさについて
失業率と自殺率との因果関係という、
思わず思考停止的に首肯しがちなデータたいする反証から、
本質を見極めて(この場合は失業率ではなく自殺率の高さが本質)、
真の原因へと迫る視点と手法は、知的昂奮を感じさせると同時に、
データについて存分に語っておきながら、
最後はヒューマン・ファクターに回帰するパオロ氏の思想が窺えて良い気分になりました